今回のロール便りは、私がパドタマ制作に携わって2回目の発行(2001年8月発行のvol.26)の時に書いたものを少しリライトして、もう一度掲載したいと思います。このレポートは1998年に入会した私が3年目の2001年に、私自身が新人ホヤホヤの時を振り返り、僭越ながら、初級者の方々に楽しく安全に川へ出てもらいたいという思いを込めて書いたものです。
初心者はもちろん上級者でも、カヌーに沈はつきものです。「沈脱して迷惑をかけてしまうから」「ロールが出来ないから」などという理由で川へ行く事を躊躇している方がいらっしゃるかもしれませんが、それはそんなに気にする事ではありません。もちろんロールが出来るに越した事はありませんが、ある程度基本的な漕ぎ方を覚えた後は、川に行って慣れる事が上達への近道です。ただ最低限、川に出るためにはセルフレスキューを身に付けておくことが大切です。沈したら落ち着いて脱艇し、艇を回収して上陸する…というのがセルフレスキューの基本です。詳しく手順を追っていきましょう。
■沈したらまず前傾します。前傾姿勢は素早くスプレーカバーをはずしやすくすると同時に、岩などから顔面をガードするためでもあります。この姿勢をとれば、最悪岩があった場合でもヘルメットで守られますので、習慣をつけましょう。
■ここで注意したいのがパドルを離さないこと。艇は流されても見つけられますが、パドルは見失ってしまう事があります。
■次にグラブループを引っ張ってスプレーカバーを外します。脱艇する時は、パドルを片手で握ったままコーミングに手を掛け、腰→膝→足先の順に脱艇します。慌てて膝から出ようとするとコックピットに引っ掛かり、かえってパニックになりやすいので必ず腰から。 ■沈脱して水面に顔が出たら、カヤックの横から艇を起こし、コックピットにパドルを入れます。艇がひっくり返ったまま放っておくと、どんどん水が中に入って重くなり、艇を回収する時に厄介です。(注:状況によっては、無理に艇は起こさなくても良い場合もあります)
■いつまでもカヤックの横にしがみついているとまたひっくり返ってしまうので、バウ(船首)かスターン(船尾)のグラブループにつかまります。
■しっかりつかまったらカヤックを引っ張るような形で安全な場所まで泳ぎます。もし泳いでいる最中にカヤックが岩に引っ掛かったり、危険な瀬に入ってしまいそうになったら迷わず艇を離し、身軽な状態で急いで岸を目指して泳ぎましょう。
■上陸して落ち着いたらたら、カヤックの水抜きをしましょう。 以上は山海堂から出版されている「リバーカヤック大全」を参照して書いたものですが、これを初めから完璧に出来る人はなかなかいないと思います。クラブで川に行った場合、沈脱しても仲間が助けに来てくれるはずです。しかし助けれらる側にもやるべき事があります。そこで、これまで私自身が実際に数えきれないくらいレスキューしてもらった時の経験と、諸先輩方の教えを基に書きます。沈脱した後は最低どんな事をすればいいのか?
沈したら前傾姿勢で脱艇、パドルを離さないことは前述と同じです。その後は救助者の指示に従います。「フネは放してもいい」とか「パドルは放していい」など言われたら放し、救助してくれる人の艇のスターン(船尾)にしっかりと掴まります。この時、牽引してくれる救助者は渾身の力を込めて漕ぎますから、ガッチリつかまっていないと離れてしまいます。私も一度プールで人を牽引してみた事がありますが、これがかなり力が必要なのです。ですからただ掴まっているだけではなく自分でも一生懸命泳ぎましょう。バタ足でもカエル足でもなんでも構いません。上陸したらまずは回収してもらった自分の艇を陸に上げ、落ち着いたら水抜きをしましょう。
どうしても初めのうちはパニックを起こしやすく、落ち着いて全ての行動を行うのは容易ではありませんが、やはり実践あるのみ。少しずつ色々な事に慣れながら、お互いに楽しく安全なカヌー生活を送りましょう! |