カヌーがアウトドアでの遊びである以上、病気やケガになることを100%避けることはできません。これらの回避は、リー ダーの指示だけでなく、システム(チーム全体)で目指すべきものだと思います。正しい知識、適切なパドリング技術、レス キュー技術、装備、フィールド知識、プランニングなどをチーム全体で整えた状態で望めば、起こった事故が致命的な状態に陥ることを防ぐことができると思います。今回のロール便りでは、「まず知識」ということで、ダウンリバー中の病気とケガ について紹介させて頂きます。(※参考文献として、山海堂「リバーカヤック大全」を用いました。)
【病気】 1.溺水(できすい) 溺
水は、死に直結する状態ですから、何としても避けなければならないところです。予防策として大きいのが、ライフジャケットをはじめとする、正しい装備を着
用することです。浮力が劣化したライフジャケットや、自分の体重に適さないものを選択しないよう、注意が必要です。また、身体に合わない沈脱しにくい艇を
選択しないことも重要です。ご自分の艇、ギアを持っていないクラブ員の皆さんは、特に注意が必要になると思います。ご自身の選択に不安がある場合は、リー
ダーや有識者に忌憚なく相談してください。また、川に危険な個所があったら、近づかないようにすることも大切です。リーダーの事前の説明や、スカウティン
グの指示に従い、安全なルート(それがポーテージになるかもしれません)をとるようにしましょう。溺水者が出た場合、一刻も早く(1〜6分以内に)CPR
(心肺蘇生法)を施す必要があります。こちらについては、クラブ行事である「心肺蘇生法講習会」にて最新の正しい知識、技術を会得することができますの
で、是非受講ください。
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2.ハイポサーミア(低体温症候群) 人間は、常に体温を36℃前後に保たなければならない恒温動物なの
で、体温を作り出す能力以上に身体が冷えると、ハイポサーミアと呼ばれる症状を起こしてしまいます。初期症状として、震えや唇の青ざめが生じますので、ダ
ウンリバー中は、お互いの状態(顔色)をチェックしあうように心がけましょう。症状が進むと、判断力が低下し、言語障害に陥り、思考分散して支離滅裂にな
る・・といった段階を踏みます。最終的には身体を自力で動かせなくなり、代謝機能が低下して死に至ります。沈脱で体温が奪われる→思考力、体力が落ちる→
コース取りや漕艇が上手くいかなくなる→また沈する・・という負のスパイラルに陥る場合がありますので、リタイアする、リタイアを勧める勇気をお互い持つ
ように心がけましょう。また、水は空気の25倍もの速さで体温を奪い取ると言われています。夏でも水温の低い川は多く、通年で注意が必要な病気であること
を認識してください。予防としては、適切なウエアリングと、体温維持のための事前、途中の食事摂取が挙げられます。ウエアリングについては、過去のロール
便りにも紹介されていますので、是非参考にして下さい。
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【ケガ】 1.擦り傷、切り傷、打撲、捻挫、骨折 ダウンリバー中のケガで最も多
いのがこれらです。多くは川原での転倒が原因によるものなので、カヌーに乗る以前の装備(特にシューズ)についても配慮しましょう。また、水位の低い川
や、隠れ岩のある場所での沈でもこれらのケガを負う場合があります。ヘルメットを着用するのはもちろん、リスクの高い川においては、暖かくても長袖のウエ
アを着用する、グローブをするなどの対策が有効になります。隠れ岩への対策としては、過去のロール便り「川へ出る時、これだけは覚えておきたいセルフレス
キュー」にも書かれている通り、沈したらまず前傾体制をとることが重要です。前傾姿勢は、ヘルメットにより岩から頭部をガードすることができますし、素早
くスプレーカバーのグラブループを引っ張ることができる姿勢でもあります。
2.脱臼 カヌーを漕いでいる時、肩に過度の負担がかか
ると脱臼をすることがあります。実際、上級パドラーの中には、スイープを入れた瞬間や、ホールの中でハイブレスを入れた瞬間に肩を外した経験をしている方
が少なくないそうです。予防策としては、肘を伸ばしきったり、上半身を使わず腕だけで漕ぐのを防ぐことが挙げられます。特に「瀬遊び」をしている際には、
肘を伸ばしきらないことに十分注意が必要になります。流れにパワーがあるので、肩に過度な力がかかりやすい場面だからです。
【執筆後記】 基
本的に山海堂「リバーカヤック大全」から内容を引用させて頂いたとはいえ、私個人の意見、当クラブでの活動に適用した場合の具体例などを付け加えました。
申し訳ないのですが、これが絶対のモノと確信はしておりません。従いまして、これをもとに、これから有意義な意見交換ができれば幸いと思っています。今
回、この文章を執筆していて、下る川の難易度、危険度などの情報や、そこから派生する必要なウエアリング、スキルのことなど、ツーリング参加希望者に事前
に様々な情報を伝える重要性を再認識した次第です。「安全」と「楽しさ」は、どちらが欠けてもいけない、アウトドアスポーツの両軸だと思います。どちらも
継続して追求してまいりましょう!
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